Journal of Experimental Child Psychology, 123, 53-72, doi: https://dx.doi.org/10.1016/j.jecp.2014.01.013.
伸芽会のYouTubeを見た時に挙げられていた論文。
積み木の数やマッチの数などの理解よりも、数字としての理解の方が数学の成績と強く関連しているのでは?というもの。
主なポイント
- 数の大きさ(数的マグニチュード)の理解は数学の成績と関連がある
- 特に記号的(symbolic)な数の大きさの理解(例: アラビア数字の比較や数直線上での推定)が、数学の成績と強く関連している。
- 非記号的(non-symbolic)な数の理解(例: 点の集合の比較)は、数学の成績と関連はあるが、その関係は弱い。
- 記号的な数の理解と非記号的な数の理解は独立して数学の成績に影響を与える
- 記号的な数の理解が数学の成績に最も強い影響を与える。
- 非記号的な数の理解も数学の成績と関連があるが、その影響は小さい。
- 両者の理解は相互に影響を与え合うというより、それぞれ独立した影響を持つ可能性が高い。
- 整数と分数のマグニチュードの理解は関連している
- 数学の学習において、整数と分数は異なる概念として扱われがちだが、両者のマグニチュード理解には強い関連がある。
- つまり、整数のマグニチュード理解が優れている子どもは、分数のマグニチュード理解も優れている傾向がある。
- メタアナリシスによる確認
- 過去の19の研究をメタアナリシスした結果、非記号的な数の理解と数学の成績の関係は弱いが、確かに存在する(r ≈ 0.22)。
- しかし、6歳未満の子どもではこの関係がより強く(r ≈ 0.40)、年齢とともに弱くなる。
結論
- 数学の成績を向上させるには、記号的な数のマグニチュード理解を強化することが効果的。
- 非記号的な数の理解のトレーニングは、数学の成績向上には限定的な効果しかない可能性がある。
- 整数と分数のマグニチュード理解をつなげる教育が有効かもしれない。
疑問として、記号的理解と非記号的理解って分けられなくない?って感じたが、それについては以下の記載あり。
SymbolicとNon-symbolicの関係
- 以前の仮説では、「非記号的な数の理解(ANS: Approximate Number System)が発達することで、記号的な数の理解につながる」とされていた(Dehaene, 2011; Verguts & Fias, 2004)。
- しかし、本研究ではsymbolicとnon-symbolicの理解は強く関連しておらず、数学の成績に対しても独立した影響を持つ可能性が示唆された
なぜこの論文を見つけたのかが気になる。